誰もが旅行を楽しむための旅に出た技術系創業者
Jay Shen氏は降車のために待機していたとき、人生で何をしたいかを悟りました。2016年当時、英国の名門ウォリック大学に在学中だったShen氏は、車椅子を利用する同乗者と短い会話を交わしました。その男性は、援助を要請してもスロープが必ずしも使用できるではないので、電車から降りられるか不安だったと言いました。
その会話はShen氏の心に残り、当時ブロックチェーン技術と「モノのインターネット」に主に関心のあるエンジニアだったShen氏は、1週間も経たないうちに、障害のある乗客の問題を解決できるアプリのプロトタイプを作り上げました。それから1ヵ月も経たないうちに、Shen氏はこの技術をイギリスの運輸業界の意思決定者たちの前でデモンストレーションを行いました。
Shen氏がガレージで作成したアプリ「Passenger Assistance」は、2021年のリリース以来、2022年時点で27,000回以上ダウンロードされています。アップル社のApp Storeトップページでも紹介され、著名なスポーツ選手や政治家も多数利用しているアプリです。
このアプリの使用目的は非常にシンプルです。例えば、車椅子で列車を乗降する際にスロープが必要であるとか、混雑した駅構内を案内してくれる人が必要であるといった、アクセシビリティを必要とする鉄道利用者が、より簡単に介助を手配・管理できるようにするものです。乗客は、今までにない方法で旅の主導権を握ることができるのです。
Passenger Assistanceのサービス以前、乗客は電話で介助を手配しなければならず、その結果、待ち時間が長くなり、不安な思いをすることになっていました。これは多くの旅行者にとって、当日の移動が非常に困難なことを意味します。Jay氏とチーム、そして彼らが設立したアクセシビリティ委員会にとって、これは受け入れがたいことでした。
毎日何千人もの旅行者が鉄道を利用していますが、英国に1400万人いる身体障害者にとって介助を手配することは、時間のかかる面倒な手続や複雑なロジスティクスで、不快に満ちた事柄になることが多いのです。Transreportの目的は、すべての人が快適で楽しく自由に旅行できるようにすることです。
英国でのサービス開始以来、当社のアプリを利用するユーザーから、家族を訪ねたり、外出を楽しんだり、仕事に行く目的で、初めて自信を持って旅行したという、とても素晴らしい感想を沢山いただいています。多くの人々にとって旅行は普通のことですが、障害者にとっては複雑さと不安に満ちています」とShen氏は述べています。
Passenger Assistanceチームは、技術的な解決策を確立するだけでなく、利用者に影響を与える課題や誤解に対する認識を高めることにも取り組んでいます。
「アクセシビリティへの不安」は、そうした課題のひとつです。本質的に、アクセシビリティを必要とする旅行には、より強い不安が伴います。入り口の閉鎖、エ停止中のエレベーターやトイレ、さらには舗装の破損等が、乗客が時間どおりに到着するかに大きな影響を与える可能性があります。その結果、障害を持つ乗客の多くは、こうした障害を見越して、極端に早い時間に駅に到着しなければならないのです。これには社会的、経済的コストがかかります。
「障害者や神経多様性のある人々が旅行する際には、より詳細な計画を立て、エレベーターの故障、トイレの閉鎖、アクセシビリティ対応入口の一時閉鎖等の予測不可能な問題を考慮する必要があります。電車の遅延や閉鎖道路は事前に知らされるのが普通ですが、交通機関利用者にとってこういったアクセス障壁は予測が困難です。旅の計画を立てる際に不安になる、とPassenger Assistanceの多くの利用者が言っています。
Passenger Assistanceチームは、エレベーターの故障や入口の閉鎖等、動的状況を他の乗客に警告できる機能をツールに追加する取組みを行っています。鉄道駅のトリップアドバイザーのような役割です。
Passenger Assistanceチームはまた、アクセシビリティに関する常識を変えたいと考えています。Shen氏らが広めたいメッセージは、アクセシビリティは国民全体の問題だということです。
「社会の中でのアクセシビリティ向上を推進することは、年金に資金を投入することと同様であり、自分たちの将来への投資なのです」とShen氏は述べています。
Shani Dhanda氏は障害関係の専門家であり、講演者、活動家でもあります。Dhanda氏は定期的にPassenger Assistanceを利用して旅の計画を立てています。「Passenger Assistanceは、障害のある乗客がより自信をもって、自由で自立した旅行をできるようにしたという点で画期的です。このテクノロジーを使用することで、交通セクターが障害者の個々のニーズに沿ったサポートを、品位ある効率的な方法で提供できます。つまり、私たちは旅を楽しむことに集中できるのです。」と障害専門家、講演者、活動家のShani Dhanda氏は述べています。
「私たちは何よりもまず、アクセシビリティを優先させます」とShen氏は述べています。
「私たちの目標は、革新的なテクノロジーを駆使して社会的・経済的成果を向上させ、人々の中でも特にコミュニティ内の最も弱い立場にある方たちの日常生活を楽にすることです。私たちは既に、このソリューションを都市バスや長距離バス、飛行機等、他の交通手段に応用する方法を模索しています。
アクセシビリティの向上は、私たち全員にメリットがあります。利用できるスペースやサービスが、特別なアクセシビリティニーズがある人々にとってうまく機能すれば、そうでない人々にとっても良い機能となります。また、生まれつき障害のある人はごく一部です。障害者となる人の大多数は、怪我や、病気、老齢が原因で障害者となるのです。だから、公共交通機関をバリアフリーにして、すべての人のニーズに平等に応えられることが不可欠なのです。
Passenger Assistance技術は、「世界で最もアクセスしやすい技術」いう非公式の称号を正当に主張しています。運動障害、視覚障害、認知障害等、ユーザーには多様なニーズが存在するので、アプリは非常に幅広いニーズに対応できる必要があります。タッチスクリーンを使えないユーザーもいれば、目が見えないユーザーもいます。また、テクノロジーを最大限に活用するには、普通とは異なるレイアウトやユーザー体験を必要とするユーザーもいるのです。ユーザーは、自身の障害やアクセシビリティ要件等、独自のプロフィールを作成することができます。