英国の地域の多くで、障害者やアクセシビリティを必要とする人々の交通手段は限られています。障害者慈善団体Leonard Cheshireが昨年発表した調査によると、鉄道でのアクセスが困難なのは、車椅子でアクセスできるバリアフリーではない駅が鉄道網の59%を占め、バリアフリー駅が不足しているからだけではありません。さらに複雑な問題というのは、列車の乗降で、特に無人駅での介助要請です。現在、無人駅は鉄道網の90%を占め、45%の駅が常時無人駅となっています。
アクセシビリティが向上すれば、全ての人に好影響があります。生まれつき障害のある人はごく一部です。障害者の大半は、怪我、病気、老齢が原因で障害を持ちます。ですから、公共交通機関をバリアフリーにし、全ての障害者のニーズに平等に応えることが不可欠です。
ロンドンを拠点とするテクノロジー企業、Transreportは昨年、 障害者が鉄道サービスに支援をリクエスト・手配できるアプリ、,Passenger Assistanceというアプリをリリースしました。このユーザーフレンドリーなアプリは、障害のある乗客の総合旅行体験を向上させるものです。アプリ利用者は、自身の障害やアクセシビリティの要件を含むプロフィールを作成できます。
Passenger AssistanceはJay Shen氏が製作し、Jay Shen氏は、誰もが独立性と柔軟性を備え、自由に旅行するべきだと考えています。アプリ開発のすべての段階で、同社は障害者の声を反映させながら製作していきました。
英国でのサービス開始以来、当社のアプリを利用するユーザーから、家族を訪ねたり、外出を楽しんだり、仕事に行く目的で、初めて自信を持って旅行したという、とても素晴らしい感想を沢山いただいています。多くの人々にとって旅行は普通のことですが、障害者にとっては複雑さと不安に満ちています」とShen氏は述べています。
障害のある公共交通利用者にとって、アクセシビリティへの不安は大きな課題です。アクセシビリティに関する障壁は、車椅子用スロープの不足から、エレベーターのない建物、利用しにくいトイレ、バリアフリーアクセスがない駅まで、多岐にわたります。
「障害者や神経多様性のある人々が旅行する際には、より詳細な計画を立て、エレベーターの故障、トイレの閉鎖、アクセシビリティ対応入口の一時閉鎖等の予測不可能な問題を考慮する必要があります。電車の遅延や閉鎖道路は事前に知らされるのが普通ですが、交通機関利用者にとってこういったアクセス障壁は予測が困難です。旅の計画を立てる際に不安になる、とPassenger Assistanceの多くの利用者が言っています。
Shen氏は、アクセシビリティはすべての人が意識すべき問題だというメッセージを広めることで、アクセシビリティをめぐる意識を変えようとしています。
「社会の中でのアクセシビリティ向上を推進することは、年金に資金を投入することと同様であり、自分たちの将来への投資なのです」とShen氏は述べています。
Passenger Assistanceの構想は、2016年に、Shen氏がワーウィック大学在学中に、障害のある乗客と話しをしたことがきっかけで生まれました。その週末に、アプリのプロトタイプが作成され、2021年にアプリが正式にリリースされました。
Shen氏のアイデアは、今日の市場で最も革新的なアプリの 1 つとして完成した。これまで介助の予約に長い時間を要していたのが、アプリを利用するとわずか数クリックで予約が可能となります。
「Passenger Assistanceは、障害のある乗客がより自信をもって、自由で自立した旅行をできるようにしたという点で画期的です。このテクノロジーを使用することで、交通セクターが障害者の個々のニーズに沿ったサポートを、品位ある効率的な方法で提供できます。つまり、私たちは旅を楽しむことに集中できるのです。」と障害専門家、講演者、活動家のShani Dhanda氏は述べています。
最初の1年で、ダウンロード数は2万7000件に達し、毎日のアクティブユーザーには、著名なアスリートや障害者活動家も含まれます。2022年6月には、アップル社App Storeのトップページで紹介され、1日で730ダウンロードを記録しました。2022年5月には、BlackFinch社とPraetura Ventures社から新たに資金を調達し、グローバルな事業拡大を展開しています。
「Transreportの目的は、世界中のすべての人が、快適で安心できる自由な旅ができるようにすることです。BlackFinch社とPraetura Ventures社の最新の投資資金は、この野望の達成に役立つでしょう」とShen氏は述べています。
また同企業はウェブアプリのリリースを間近に控え、意気込んでいます。特に、ノートパソコンやコンピュータ画面の方がニーズに合っており、モバイルアプリよりもデスクトップの利用を好む乗客にとっては、サービスがさらに利用しやすくなると考えています。もうひとつの課題は、障害者は貧困に陥る可能性が高いので、必ずしもスマートフォンを所有できるわけではない、ということです。
「私たちはまた、ユーザー生成の要素をPassenger Assistance体験に取り入れることにも取り組んでいます。これには、ユーザーが受けた支援を評価する仕組み等があります。Passenger Assistanceには、鉄道駅のトリップアドバイザーのような機能を付加したいと考えています」とShen氏は述べています。